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《 YAMATO SOUND ALMANAC 1982-V DIGITAL TRIP 宇宙戦艦ヤマト 》

 アルバムレビュー

 思いの外、気に入っているアルバム。発売と同時にLPを買い、大人になってからCDも買った。子供の頃にはLPを何度となく聞いたし、大人になってからもあの頃と同じ思いで聞いている。音の古さが一切気にならないところをみると、私の好みとこのシンセサイザーのアレンジがぴったりマッチしているからだと思う。胸の奥に染み込む感触が実に心地よく、ヤマトのメロディーと奏者によるアレンジと演奏がぴったりと重なり合っていて好ましいハーモニーとなっている。このアルバムとの出会いは、私の音楽人生に予想外の幸せをもたらしてくれた。

 LPの発売が1982年で「完結編」公開の前年にあたる為、「完結編」の音楽は入っていない。その頃こういったアニメ作品のシンセサイザーのアルバムが何作か発売されていて、「ヤマト」的にはやや中途半端な時期ではあったが、考えてみると「永遠に」までの音楽で良かったかも知れないと思っている。「完結編」の音楽は「ヤマト」の中でも別格の赴きのある音楽となっているので、この中に入ると音の流れが若干変わってしまったことと思う。

 収録されている曲は、どれも「ヤマト」の中では名高い曲ばかりで無難な選曲と言えると思う。シンセサイザーの音色は壮大な広がりを連想させる為、「ヤマト」とシンセサイザーという出会いは試みてみる価値のある出会いであったと思う。基となっているメロディーがしっかりと「ヤマト」を語っている為、シンセサイザーのアレンジとなっても「ヤマト」らしさはすっかり消えてはいないと思う。しかし第三者が編曲し演奏しているので、これまでの「ヤマト」では見えなかった風景が見えて来るようなアレンジとなっている。それが、編曲者のセンスであるのだが、私にはそれをすんなりと受け入れることが出来た。(3)「想人」は、宇宙のというよりは地球の広大な自然を思わせるアレンジとなっていて、深く静かにたゆたうようなしっとりと心に染み込む懐かしささえ感じられる演奏となっている。(4)「イスカンダル」では、「デスラー・襲撃」と絡み合って奏でられ、これまでの「イスカンダル」からは連想出来ない斬新なアレンジだし、(7)「白色彗星」は、一見あのパイプオルガンと同じような印象の演奏のように思えて、締めくくりの音の余韻がやはり斬新なアレンジとなっている。こういった第三者のアレンジを受け入れることが出来るかどうかは個人の好み次第だが、シンセサイザーのみで奏でられた「ヤマト」という試みは多いに評価出来るアルバムだと思う。

 このLPを聞いていた当時、私は竹宮惠子の漫画にハマっていて、このアルバムを聞きながら読んでいたせいかこのアルバムを聞くとその頃読んでいた漫画が脳裏に蘇って来て胸が暖かくなる。感受性が豊かな年齢に出会った影響はかくも大きく、その後の自分を形成している。音楽との出会いの上で自分の中で大切な一枚。

 (1)序曲

 このアルバムの編曲とシンセサイザーを演奏している深町純氏は、アルバム「ファイナルへ向けての序曲」でもシンセサイザーの奏者として参加しているので、「ヤマト」の音楽とはいささか関わりのある人。

 アルバムの1曲目は、「ヤマト」の音楽にはこれがなくては始まらない「序曲」。「序曲」と聞くと、あの有名なスキャットが耳を過るが、このアルバムはシンセサイザーのみで演奏されているので、人の声も他の楽器の音も入っていない。それは、シンセサイザーという楽器が様々な楽器の音色もカヴァーするほどの特殊な楽器であるので、シンセサイザーから生まれる音世界(ファンタジー)に絞るというはっきりとしたコンセプトが感じられる。

 スキャットがなくとも、分厚い音色のオーケストラがなくとも、このシンセサイザーによる「序曲」は、しっかりと深町純氏のアレンジによって奏でられている。聞き慣れたサウンドとは違う響きで耳に入って来るが、シンセサイザーの音の響きを考慮した編曲であるので、無理矢理感を感じることなく聞くことができる。アルバムの1曲目としてインパクトのある音の出だしとなっていて、深町純氏の描く「ヤマト」の世界観が良い形で表れていると思う。

 (2)宇宙戦艦ヤマト

 主題歌「宇宙戦艦ヤマト」。タイトルを目にしただけでイントロが耳に聞こえて来そうなほどの有名曲だが、シンセサイザー版はそれを見事に裏切っている。

 出だしからしてあの主題歌とは異なるイメージで始まる。一応、メロディーをシンセサイザーならではの音で奏でてはいるが、聞いているうちにその音も周囲の演奏と溶け込み、一体化する。解説書には「バラバラに解きほぐし(中略)組み立て直して」とあるが、まさにその通りで、演奏者のセンスによって新たに組み立て直された「宇宙戦艦ヤマト」となっている。非常に実験的な曲だが、このようなことが出来るのもオリジナルがしっかりと組み立てられているからだと思う。

 (3)想人

 小鳥のさえずりから静かに穏やかに始まるシンセサイザー版「想人」。オリジナルは、映画の終盤のシーンを愁いあるメロディーで静かに盛り上げ、最高のBGMとしての役割を果たしていたが、シンセサイザーによってアレンジされた「想人」は、宇宙のというよりも地球のどこか秘境の地の佇まいを感じるような雰囲気となっている。

 オリジナルの「想人」を殊の外気に入っている私だが、別視点から描いているこのシンセサイザー版「想人」も気に入っている。

 (4)イスカンダル

 このアレンジは、好ましく思わない人が多くいるかも知れない。何故なら、「イスカンダル」というタイトルではあるけれども、「イスカンダル」のメロディーに「デスラー襲撃」を絡めたアレンジとなっており、そしてどちらかというと「デスラー襲撃」の方に重きを置いているデスラーへのオマージュとも取れるアレンジとなっている為。

 このようなアレンジでは、せっかくの「イスカンダル」の美しいメロディーが「デスラー襲撃」を引き立たせる為の扱いのようで、「イスカンダル」を好む人にはおすすめしにくいアレンジではあるのだけど、スリリングな曲の後背で美しいメロディーが鳴っていて、一つの新しい曲になっているという点では演奏者のセンスを感じ取ることができる。タイトルと切り離して聞くことをおすすめする曲。

 (5)愛よその日まで

 シンセサイザーによる独特のアレンジが多い中、この曲はオリジナルのイメージに近いまま無難な仕上がりのアレンジとなっている。

 「永遠に」の晴れやかなラストのようなホッと息のつける安堵感のある演奏が暖かい。

 (6)真赤なスカーフ

 タイトルを目にするだけでささきいさおさんの歌声が聞こえて来るあの有名なエンディングテーマをシンセサイザーが歌っている。

 とはいえ、やはりシンセサイザーなので、オリジナルよりもエレクトロニクスなムード漂う響きになっている。オリジナルの良さは、アニメソングとは思えない歌謡曲の雰囲気たっぷりの情感のこもった歌詞と歌唱なので、これらがないと、シンセサイザーでも違和感のない曲なのだということが分かる。そして、シンセサイザーだけにオリジナルより宇宙ぽい響きになっている。

 (7)白色彗星

 原曲は、パイプオルガンによる演奏。その原曲のイメージのままシンセサイザーが奏でている。パイプオルガンの独特の音色まではさすがに表現されてはいないが、低音で始まるあのメロディーの厚みは引けを取らないほど表現されている(パイプオルガンの音よりも低く重厚かもしれない)。

 シンセサイザーによる演奏は、少しずつ音階が上がり、繰り返されるメロディーの途中に突如破壊的な音が飛び込んできて曲がフェイドアウトする。初めて聞いた時にはこの音に驚かされたが、聞き続けているうちにすっかり馴染みのあるものとなった。白色彗星の破壊的な性格が表現されているように思う。

 (8)大いなる愛

 名曲「大いなる愛」のシンセサイザー版。この曲に関しては、オリジナルが素晴らしいだけにどんな楽器で演奏してもメロディーを奏でるだけで自然と曲の良さが伝わって来る。

 シンセサイザー版では、オリジナルよりもずっとテンポがゆっくりと奏でられている。ゆっくりと静かに深く染み入るような演奏。

 (9)ヤマトより愛をこめて

 「さらば」のエンディングに流れた歌のシンセサイザー版。…と説明すると、あの重々しいラストが脳裏に浮かんで来るかも知れないが、少し軽めなアレンジとなっているので、映画とは切り離して独自の曲として聞くのが正解なアレンジとなっている。はっきりとしたリズムが打ち出されているアレンジ。

 ただし、曲のラストは、一転して「さらば」のあのラストを思わせるしっとりとしたメロディーを静かに奏でているので、アルバムのラストに相応しい綺麗な締めくくりとなっている。

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