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《 ETERNAL EDITION File No.8 宇宙戦艦ヤマト 完結編 》

 (1)二つの銀河

 「完結編」は、この曲からスタートする。物語は、銀河系の中心部に突如異次元断層から現れた別の銀河が衝突するという宇宙規模の不測の事態から始まっていて、この曲はその衝突する二つの銀河を音楽で表している。整然とした層の厚い弦楽器が必然的に緊張感を高まらせている。

 荒々しいようでいてその実まとまりのあるところが物語の「起」となるに相応しい名曲。スペクタクルさと人知を超えた宇宙の神秘さが掛け合っていて、ややもすれば作品の描く宇宙よりも遥かに壮大な宇宙を連想する素晴らしい曲だと思う。音楽によって作品の厚みが決まるそんな決定力を持っている鍵となる曲。

 (2)水没するディンギル星

 二つの銀河の交叉により突如現れた水の惑星アクエリアスによって水没を余儀なくされたディンギル星の水没シーンのテーマ。作曲は、羽田健太郎氏。

 地球では考えられない規模の洪水の映像は、ヤマト乗組員たちを驚かせた。この曲は、水没の恐ろしさをドラマチックに描いており、大量の水の圧倒感を音の緊張感によって伝えている。この曲は、ディンギル星の水没シーンの他にも冒頭の銀河系中心部に向かうヤマトのシーンでも流れた。

 (3)移動要塞

 スパニッシュのメロディーがディンギル星人の人となりを表している、ディンギル星人の内面を描いている曲。攻撃的なディンギル星人らしい早いリズムの曲となっている。作・編曲は、宮川泰氏。

 こういった敵方の内面にまで踏み込んだ細かいところにまで曲作りがなされているので、「完結編」は本当に曲数が多い。それだけ音楽と映像の関連性に力を入れていることが分かるのだが、このタイトルでは分かりづらいかも知れない。「移動要塞」というタイトルでは、全体像を表している曲のように思える。さしずめ「ディンギル星人」の方が単刀直入で分かりやすかったかも。

 (4)ウルクの歴史

 ウルクとは、水没したディンギル星から脱出した都市衛星のこと。ディンギル星人は、かつて地球から移住した民族の末裔で、祖先が地球から移民せざるを得なくなったアクエリアスを利用して、地球人を抹殺しようと企むディンギル帝国の都市衛星。中には神殿があり、長い歴史と文明を誇っている。

 重厚感のある曲で、低音の男性コーラスが美しく、ピアノコンチェルトと相俟って重みのある盛り上がりのある曲となっている。低く静かな出だしが、ウルクの底にある凄みを表現していて美しい響き。作曲は、羽田健太郎氏。

 (5)ユキの悲しみ

 映画前半の、ハイパー放射ミサイルを受けて全乗組員が倒れ、自動操縦で地球へ帰って来たヤマトへユキが駆けつけ、第一艦橋で死んだように倒れている古代を見て自殺を図ろうとしたシーンの後に流れた曲。作曲は、宮川泰氏。

 「ユキの悲しみ」というタイトルなのでシーンの説明が長くなったが、この曲の印象はどちらかというとユキの悲しみのシーンよりもその後のアクエリアスの地球接近後15日というナレーションのBGMという方が強い。ちょうどナレーション部に曲の盛り上がりが被ったからかも知れないが、この曲を聞くと仲代達矢さんのナレーションを一緒に思い出す。

 (6)冥王星海戦

 「完結編」前半の重要な戦い、ディンギル帝国の地球攻撃艦隊との戦いを表した曲。作曲は、宮川泰氏。

 ヤマトの戦いのテーマの中でこれほど奥行きのある楽曲はないかも知れない。ヤマトの視点側だけではなく、敵側が優位となって攻め込んで来ている地球側の劣勢さも表現されているので、混沌とした戦いの空気を感じることが出来る。冥王星海戦は、ハイパー放射ミサイルの防御策もないまま戦った不利な状況での戦闘。共に戦った地球残存艦の決死の行動に涙。

 (7)ルガール総統の斗い

 ディンギル星を統べているルガール総統の斗いを表した曲。スパニッシュ風の速いテンポの曲で、特に掛け合うギターとピアノの速い演奏が特徴的。作曲は、宮川泰氏。

 ルガール総統は、統治者としたどっしりとした威圧感を持ちながら、自ら戦闘の前線にも赴く勇猛果敢さも併せ持っている。この曲はそんなルガール総統の戦闘の雰囲気を表現した曲だが、ロボットホースにまたがってヤマトの甲板上で闘う姿は敵ながら堂々としていた。指揮官として一つの理想を形にしたような人物。

 (8)ハイパー放射ミサイル

 ハイパー放射ミサイルとは、ディンギル星の武器のことで、艦の装甲を破って突き進み、艦内に放射性物質をまき散らす恐ろしい武器。ヤマトは初めて対戦した時にこのミサイルを受けて、多くの死傷者を出し、第一艦橋クルーも仮死状態となった。冥王星海戦では防御策がないまま再戦となり、多くの味方艦を失った。この曲は、そんな武器の恐ろしさを表現している。作曲は、羽田健太郎氏。

 速いテンポの曲で、心理的な焦りをも感じる曲。得体の知れない敵の武器という恐怖感が伝わってきて、気が逸る。ディンギル星の誇らしささえ感じられる武器で、この曲に乗って発射されたミサイルは異様な威圧感があった。

 (9)悲愴のボレロ

 冥王星海戦でディンギルの艦隊が補給の為に引き上げた際、戦場に束の間の休息が訪れた。その間を利用し、負傷兵の救助を行っている時、非情にもディンギルの別働隊が現れ、攻撃を開始した。再び多くの命が奪われたシーンを表現している曲。作曲は、羽田健太郎氏。

 曲自体には、それほど深刻な悲壮感が漂っているようには感じられないが、映像と併せて聞いた時に、ドラマを盛り上げるインパクトさがある。歯切れの良いリズムと華麗なハープの音が生きている。

 「宇宙戦艦ヤマト Best Collection」に収録のものは、静かなリズムのドラムと弦の約19秒のイントロ付き。「ETERNAL EDITION File NO.8」に収録のものは、このイントロ部がカットされた映画使用時に近いもの。

 (10)抜けるヤマト

 冥王星海戦を戦い抜いた後のヤマトの曲。戦闘終了後のホっと息を抜けるシーンで使用され、画面には機関室を整備する太助や、コスモタイガーを整備する加藤、地球に残った弟へ手紙を書いている島、荷物の整理をするユキといった姿が映し出された。

 冥王星海戦は激戦で、ハイパー放射ミサイルの防御策もないまま戦い、多くの味方艦の犠牲を出した。みなヤマトに希望を託し、ヤマトを守るべく自らミサイルに当たっていったのだが、こういった犠牲の上の勝利は心に痛い。それでもまだ戦いはまだ序盤に過ぎず、ここからが正念場。辛い戦いを一つ抜けたヤマトの為の曲。作曲は羽田健太郎氏。

 (11)水の星アクエリアス

 ヤマトの前に忽然と姿を現した水の惑星・アクエリアスの美しさを表現したテーマ。「ヤマト」特有の伸びのあるスキャットが綺麗なメロディーを響かせている。作曲は、宮川泰氏。

 アクエリアスに関する曲はどれも美しいメロディーを奏でていて、中でもこの曲はその中心を担うメインとなるテーマ。「ファイナルへ向けての序曲」に収録されている「水の惑星アクエリアスとクイーン・オブ・アクエリアス」で奏でられたテーマに、より鮮明なテーマがプラスとなりメインテーマとなった。この曲のどこまでも澄み切った美しいメロディーは、「完結編」の中でも一際美しさを放っている。

 (12)神秘の星アクエリアス

 水の惑星アクエリアスの美しい景色を描写した曲。青く美しい水と綺麗な花、古代文明の遺跡と穏やかに流れる時をゆったりと美しく音で表現していて、心までゆったりとした気分になる。作曲は、宮川泰氏。

 アクエリアスという星は本当に綺麗な星で、映画でヤマトがこの星に降り立った時には、その美しい景色に心が洗われた。本編中で最も美しいシーン。この曲の後は「水の惑星アクエリアスとクイーン・オブ・アクエリアス」の曲へと続き、心行くまで星の美しさを見せてくれる。

 (13)驚異のニュートリノビーム

 この曲は、映像と合わせて聞くと鳥肌が立つほどの脅威を感じる曲。公開当時、映画館で最初に見た時、ニュートリノビームの恐ろしさが真田さんの口から叫ばれ、と同時にこの曲が覆い被さるように聞こえて来てゾクっとした。あの美しい妖しい薄紫色のニュートリノビームがとても怖く感じられた。逃げられない恐怖心を煽っている。作曲は、羽田健太郎氏。

 この一連の息をつく間もない緊迫したシーンの連続は、かっこいい絵の連続。「ニュートリノビームだっ!」と叫ぶ真田さんも「何ぃっ!?」と叫ぶ古代と島も「波動エネルギーが漏れてます。これ以上、上がりませんっ!」と叫ぶ太助も「ニュートリノビーム接近!逃げ切れませんっ!」と叫ぶユキもみんなかっこいい。映像が丁寧に作られてあってもう一度見たいシーンの一つ。

 (14)ロボットホース襲来

 「大ディンギル星」のテーマのアップテンポ・アレンジバージョン。規則的に鳴るバスドラムのドンドンという音とスパニッシュなリズムが、ロボットホースに股がってヤマトに襲いかかるディンギル星人の勢いを表している。作・編曲は、宮川泰氏。

 ロボットホースは、素晴らしいアイデアだなぁ…と初めて見た時から思った。馬特有の美しいフォルムが活かされており、機能的な美しいデザインになっている。音楽もまたロボットホースの勇ましさを引き立てていて流れるような格好良さ。

 (15)FIGHTコスモタイガーII

 「音楽集1」収録「FIGHT!コスモタイガー」は、どちらかというと「新コスモタイガー」のノリに近い曲なので、この「II」により「完結編」の音楽としてバランスが取れるようになった。作・編曲は、宮川泰氏。

 とはいえ、ドラムとギターはちゃんと活きている。軽快なパーカッションのリズムと滑らかなストリングスとブラスが加わったことで、「完結編」らしい響きとなった。オーケストレーションされた形になるのだが、やはりそれでも格好良さは変わらない。活躍するコスモタイガーの勇姿が目に浮かぶ曲。

 (16)大魔神

 ディンギル帝国の守護神像のテーマ。アクエリアスをワープさせている真のコントロール施設、神殿に鎮座している巨大な魔神像で、黒く堂々と空間を見つめている姿が印象的。暗く妖しい守護神のイメージを重みのある演奏で奏でている。

 地球人の末裔であるディンギル帝国はどのような宗教であったのかは詳しいことは分からないが、神殿の存在とこの大魔神の存在は、歴史の古さを思わせた。強き者が生き残るというディンギルの掟に相応しい畏怖の念を感じる守護神像であった。

 (17)薄幸のディンギル少年

 バイオリンの音色が寂しく響く、ディンギル少年の幸薄さを表現した曲。少年のあどけなさと悲しさを併せて表現していて切なくなる。作曲は、羽田健太郎氏。

 ディンギルの少年は、ヤマトで過ごすうちに地球の文化に触れ、その為に命を落とした。まだあどけない少年が命の恩人である古代進を庇おうとして、銃を向けている父親と古代の間に飛び出したのは、本当に真っ直ぐな勇気のある行動だった。「地球ではほめられることしたんだろう?…ぼく…」の最期の台詞は、胸に痛かった。

 (18)島を想う

 まさしく島の亡くなるシーンで流れた曲。出だしの第1音から作品の中で流れ、島に縋り付いて泣きじゃくる古代の涙まみれの顔がまざまざと蘇る。重く深い悲しみを湛えている曲。

 島の亡くなるシーンは本当に辛くて、今でもこの曲を聞くと(ああ…完結編で島は亡くなってしまったんだ…)と塞いだ気分になる。当時よりも齢を取ってからの方が島への思い入れは深くなっていて、古代と共にその後の地球で活躍して欲しかったという願いが強くなっているので、よりいっそう曲の軸となっている悲しみの調べが心に堪えるようになった。テレサとの愛も含め、悲しみに満ちた島の生涯を愛しく思う。

 (19)沖田と古代

 水の惑星アクエリアスが地球に最接近し後24時間で地球が水没するという危機に瀕しヤマトを自沈させる決意をした古代が沖田艦長のところへ許可を得に訪れたシーンの曲。総員退艦時に沖田艦長が古代とユキの肩を抱いて「良い子を産むんだぞ…」と語りかけたシーンでも流れた。作曲は、宮川泰氏。

 この曲は、まさに父子(おやこ)の絆の濃さを表す曲で、「1」で出会った沖田艦長(父)と古代進(子)のそれぞれの万感の思いが込められている曲。宮川先生でなくては成し得ない曲だと思う。弦楽器とトランペットの響きが、優しく悲しく二人を包むように奏でられている。

 (20)SYMPHONY OF THE AQUARIUS

 9分45秒という壮大な曲。作曲は羽田健太郎氏。映画では、ヤマトに単身残った沖田艦長がアクエリアスから地球に伸びる水柱を断ち切るシーンで流れ、ヤマトが自爆すると分かっている悲壮感と曲のスペクタクルさが相俟ってシリーズ中最高に重みのあるシーンとなった。

 ピアノコンチェルトという手法が用いられたことで、クラシックに近い曲となっているが、これは「完結編」の音楽の傾向を見ると自然の成り行きで、中でも9分45秒に及ぶこの曲は「完結編」の音楽の集大成と言える曲だと思う。地球とアクエリアスの中間で息絶えるヤマトへの思いの丈を込めたシンフォニー。ヤマトの映像と音楽の醍醐味をたっぷりと味わうことが出来る曲。

 (21)アクエリアス45億年

 映画のラスト、ヤマトと古代とユキを迎え入れるクイーン・オブ・アクエリアスの映像と共に流れた曲。作・編曲は、羽田健太郎氏。

 この曲には、長い物語を終えた後の寂寥感と努めを果たし終えた軽い晴れやかさが入り混じった、たゆたうような優しい思いがこもっている。緩やかで長大な楕円軌道を描くアクエリアスにヤマトは全てを抱かれ、永遠の眠りへと就いた。それは、全てを終えた隠し切れない寂しさと軽い開放感であり、解き放すという癒しである。この曲は、「宇宙戦艦ヤマト」のシリーズ全体の終焉の曲。優しいスキャットと男性コーラスのハーモニーが心に染みて美しい。
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